4.調査


 アンナ達が決意新たに光の聖地を目指し旅立ったその頃、クラトスは王都グランディアにいた。
 四神が神殿ごと闇の力によって封印された様は、王都にいる者達にも見えていた。
 大陸の中心、しかも全体を見渡せる高台にあるこの街に住む人々は、他のどの地よりもエビルの力をはっきりと見せつけられる事となり、よって、人々のその驚異の力への恐怖感も並ではなかった。
 次は王都が狙われるとの噂が流れ、悲鳴を上げその場に蹲ってしまう者、泣きながら神へ祈りを捧げる者、どうしていいのか分からずにただ町中をうろつく者や、安全な地を求め家財一切を持って脱出しようとする者。この機に乗じて強奪を繰り返す者まで現れる始末。
 すぐさま王により、この混乱を収めよとの厳令が下されたが、何しろ当の城内も混乱状態にあったため、事態はなかなか収まりそうにもなかった。
 狂ったように人々が右往左往している中を、クラトスは、逃げ惑う人々をかき分ける様にしながら歩いていた。家財道具を担ぎ、あるいは、着の身着のままで、兎に角安全な場所へ避難しようと城門へ押し寄せる人々を眺め、愚かな事だと呟く。
 一体何所へ逃げようというのだ。安全な場所など、もうこの地には存在しないと言うのに。
 クラトスも神殿が封印される様子は逐一この目で見ていた。自分が相手にしている者の持つ、あるいは神以上とも言えるその力の強大さに、少なからずショックを受けた事も事実である。だが、自分は逃げる訳にはいかない。例え相手がどれ程のものであろうとも、負ける訳にはいかないのだ。自分の敗北は、すなわち、この世界の終わりという事なのだから。
 アンナ達は大丈夫だろうか・・・クラトスは立ち止り、風の神殿の方へと目をやった。
 風の神が言っていた、例え何が起ころうとも私達は常にあなた方と共にいる、という言葉はこの事を指していたのだろうか。風の神・・・いや、恐らく全ての神はこの事を予期していたのだろう。考えてみれば当然の動きだ。聖剣の完成を阻止するのなら、光の聖域に行くのに必須である四神の力を封じてしまうのが一番確実なのだから。私がエビルの立場でも迷いなくそうするだろう。
 ならば聖剣はどうなる?・・・・・いや、アンナにはあの人が付いている。あの人はどんな状況に陥ろうとも必ずやアンナ達を正しい方向へ導いてくれるに違いない。
 そう考えた途端、クラトスの顔に苦笑が浮かんだ。
「私はあの人の事を憎んでいたはずなのにな。」
 それが今では誰よりも信頼を寄せている。
 ・・・・いつか・・・あの人を母として受け入れる事ができるだろうか?いや、もう自分の中ではとっくに整理は付いているのだ。一歩踏み出す勇気が持ててないだけで。だが、このままでいい訳がない。せめて私が私である内に一度でいいから・・・
「もう、後になって悔むのは沢山だからな。」
『何が沢山なのだ?』
 いきなり聞こえた声に、クラトスは文字通り飛び上った。
 ・・・そうだ、この人の存在をすっかり忘れていた。
「オリジン、同行は断ったはずだが?どうしても付いて来たいのなら、せめて姿を消していてほしいのだが。」
『何故このままではいかんのだ?私とてたまには人間達の中を歩いてみたいのだ。』
「貴方と同類に思われたくはない。」
『酷い物言いだな。私のどこがおかしいというのだ。ちゃんと人間らしく見えるようにロイドから服も借りてきただろうが。』
 確かにオリジンは今服を着ていた。ロイドの着ているあの赤い服を。
 クラトスは、オリジンが自分の後にくっついている事を知った時、追い払う為に、自分と一緒に行動するなら人間らしい恰好をしてくれと注文を付けたのだ。“どうだ、出来んだろう?だから貴方は帰れ”という意味合いを込めて言ったつもりだったのだが、オリジンは怪しい笑いを浮かべるや否や、ロイドの服を取り出したのだった。そう言うだろうと思ったから借りてきたのだと言う。
 今から着るから待っていろ、と言うオリジンに、いや、どう見ても貴方の体にその服は小さすぎる気がするのだがと思うクラトス。
 案の定、オリジンの体には無理のようだった。だが、それでも無理矢理引き延ばしてボタンを留めるオリジン。何とか体を押し込む事に成功し、どうだとばかりに笑みを浮かべる。
 その今にもはち切れそうな服を身に付けたオリジンを見て、クラトスは、“ちんちくりんの妙ちきりん”とは、この人の為にある言葉だったのかと妙に納得してしまうのだった。とにかくこんな人と一緒に歩くのはご免だ、と改めて同行を断り一人でこの町へやってきたはずだった。
「お願いですから帰って下さい。今は私よりロイドの方が貴方を必要としているはずです。」
 頭を下げ、何とかお帰りを乞うクラトス。しかし、オリジンは、
『父親の身を案じて私を寄越した、息子の涙ぐましい程の優しい心遣いを、お前は無下にする気か?何と言う薄情な父親なのだ。』
と、大袈裟に嘘泣きを始める。クラトスは、周りを気にしながら慌ててオリジンを宥めた。幸い周りの連中はそれどころではないらしく、殆どこちらには注意を払っていないようだった。
「分かった、分かったから。同行してくれて構いませんから。」
 その言葉を聞いて、コロッと笑顔に変わるオリジン。クラトスは溜息をついた。と、そこへ、
「おい、あんた。確かあんた、以前ダイナス殿と一緒に城中の書庫へ調べ物に来た人だよな。」
「あなたは、書庫の警備をしていた方でしたね。名前は・・・パーソンさん、でしたか?」
「おお、覚えていてくれたかい。」
パーソンは、嬉しげにバシバシとクラトスの背中を叩いた。
「あなたこそ、よく私の事を覚えていらっしゃいましたね。私はダイナス殿の後ろに立って、あなたとダイナス殿が話しているのを見ていただけで、あなたとは一言も話しをしなかったというのに。」
「いやあ、ダイナスさんが人を連れてくるなんて珍しい事だったからな。それにあんた、目立つし。」
「あなたは、ダイナス殿をよくご存じなのですか?」
「よくって訳じゃないけどな。あの人は数年前まで城勤めをしていたから、自然噂は耳にしていたし、何度か話をしたこともある。」
(やはり、彼は以前城に勤めていたのか!どうりで王都の事に詳しかったわけだ。)
「なんでえ、あんた知らなかったのかい?親しそうにしていたから当然知っているものと思っていたんだが・・・」
クラトスの様子を見て首を傾げるパーソン。
「実は私はあの方に命を助けられ、しばらくお宅でお世話になっていたのです。ショックで記憶を失っていた私の為に手がかりを探す手伝いまでして頂いて。王宮の書庫に来たのも、あそこならこの世界で起きたあらゆる事件の記事が収められているから何か分かるかもしれないと連れて来て下さったのです。お陰様で私も失った記憶を取り戻す事が出来ましてね。この度、改めてお礼にとサバーブ村へ訪れました所、どこかへ出かけられたきり、戻られていないという。あの方の事を何も知らなかったもので探しようもなく、途方にくれていた所にばったりあなたにお会いしたという訳でして。」
「ほう、そうだったのかい。確かにあの書庫なら調べられないものはないと言う程、様々な情報が収められているからな。まあ、記憶が戻って良かったなあ。」
再びバシバシとクラトスを叩くパーソン。
「そのダイナスさんなんだけどな。実は、城の中で、光子様と共に旅に出たとの噂が流れてな。サバーブにいなかったとなると、その話はまんざらデマではなかったようだな。」
「光子様の旅に同行を!?せめて一言お礼を言いたかったのだが、それではお会いできませんね。ああ、何て事だ。もう少し早く訪れてさえいれば、お会いできたかもしれないのに・・・」
クラトスは大袈裟に頭を抱えて見せた。人の良いパーソンは、そんなクラトスを慰めるように、
「確かに危険な旅かもしれないが、ダイナスさんは頭も切れるし、術の腕もピカイチだ。光子様の旅が終わったら無事に戻ってくるさ。その時また訪ねればいいじゃないか。」
「そうですよね・・・きっと無事に戻られますよね。」
「そうともよ、決まってるじゃねえか!」
縋るように自分を見るクラトスに、太鼓判を押して見せるパーソン。
クラトスはそんなパーソンに、おずおずと切り出した。
「パーソンさん、よろしかったらダイナス殿のお話を色々とお聞かせ願えないでしょうか。私は命の恩人であるあの方の事をもっと知りたいのです。」
「ん?・・・まあ、あんたの気持も分からないでもないがな。」
パーソンは少し考えてから、
「いいぜ。俺も詳しい事は知らねえがそれでもいいなら話してやろう。そうだ、俺の家にくるかい?こんな状態だ。泊まる所もねえんだろう?俺は独り身だからなんの気兼ねもいらねえよ。その代り大した世話は出来ねえがな。」
「よろしいのですか!?それは助かります。」
 俺の家はこっちだ、と、案内に立つパーソンについて行くクラトス達。
『おぬし、なかなかの役者だな。よくもああペラペラと嘘八百を並べ立てられたものだ。』
オリジンが呆れたように小声で話しかけてきた。
「あの善人に嘘をつくのは少々気がひけたが、この際仕方ないだろう。だが、私がダイナスという人間をもっと知りたいと思っているのは本当の事だ。」
 ダイナスが自分達を騙していた事は事実だ。彼は最初からそのつもりで自分に近付き行動を共にしてきたのかもしれない。だがその一方で、ダイナスが時折見せていたあの深い悲しみに満ちた表情が、どうしても気になって仕方がなかったのである。
 彼の抱えているあの悲しみの正体を知りたいと思う。
 クラトスは、ダイナスの心を知る事こそが、自分の中に未だ残っている迷いを振り切る最善の方法なのではないかと思っていたのだった。



 グランディアの中には、四つの住居地域が存在する。
 身分の高い貴族階級の者が住んでいる貴族街。城中で働いている者達(ここではそういう者達を城士と呼んでいる)が集まっている城士街。一般人や商人が集まっている平民街。そしてそのいずれにも属さない非人と蔑まれている貧民達が集まっている非人街、という感じにそれぞれの身分に分かれ居住していた。
 驚いた事に、クラトス達が案内されたパーソンの家は、その中の非人街にあった。
「まあ、少々ぼろい家だがよ、我慢してくれや。今、茶でも入れてくるからそこらに座っていてくれ。」
と、台所でガシャガシャと用意を始めるパーソン。
「コーヒーしかないんだがコーヒーは苦手かい?」
「いえ、大丈夫です。」
「そちらのお父さんも?」
 クラトスは思わず隣に座っているオリジンに目をやった。オリジンは、“お父さん”という言葉にカチンときたらしく、顔をしかめている。
「・・・そう・・・見えますか?」
 親子だと思われた事にショックを受けるクラトス。
「いんや、全然。冗談だよ、冗談。」
ハハハと笑うパーソン。
「・・・・・・・」
「しかし、そちらさん、奇妙な服着てるよな。それってなにかい、あんたらの町でははち切れそうな服着るのが流行っているのかい?」
『この服のどこが奇妙だと言うのだ。この服はクラトスのむす・・・っ痛い!!』
 クラトスがオリジンの足を思いっきり蹴とばしたのだった。
「この人は小さめのサイズの服をはち切れそうに着るのが好きという変わった趣味を持っているんですよ。どうかお気になさらずに。あと、このただの連れもコーヒーで構いませんので。」
『私は紅茶しか飲まん・・・グエッ!』
 今度はクラトスの肘鉄がオリジンの腹にめり込んだ。
「いやあ、面白い人だねえ。」
 パーソンは笑いながらコーヒーを運んで来て、二人に出した。それを受け取りながら、クラトスは真顔に戻り、パーソンに尋ねた。
「ところで、確かこのグランディアでは身分ごとに住む所が定まっていると聞きました。パーソンさんの場合、当然城士街に住まわれているものと思っていたのですが。」
「まあ、確かに俺は城勤めをしているからあっちに住む事もできるさ。だが、ここは俺の生まれた家だし、両親の思い出もたくさん詰まっているから離れたくないんだよ。」
「パーソンさんは、ここで生まれたのですか。」
「ああ。俺の親父は城の兵士だったんだが、お袋がここの住人でね。結婚を反対された親父は家を出てここでお袋と所帯を持ったんだ。風当たりも相当なものだったようで、兵士から書庫の見張り番に格下げされちまった。たが親父は全然気にしなかったようだがな。
 王宮の書庫の警備と言えば聞こえはいいが、あんな所に侵入しようなんて奴はいないし王家もさして重要視していない所だから、あそこに配置される人間は城士の中でも最低の身分の奴ばかり。問題を抱えて各部署をタライ回しされているような奴が最後に行き着く所があそこなんだよ。親父は結局出世コースから外されたって事だ。ただここの人間と結婚したってだけでな。
 俺は親父の後を継いで一応あそこの警備の仕事をやってはいるが、そんな事もあったものだから本当は城なんて所は好きじゃねえ。だが、人間生きて行く為には金が必要だからな。お袋も病気勝ちだったのもあって生活の為には背に腹はかえられなかった。
 城士街に移る事が出来るのにもかかわらず、俺がここに住み続けているのは身分制度ってやつへの最後の抵抗って所かな。」
「何故ここに住む人達は差別を受けるのでしょうか。」
「ここの連中はほんの初歩の魔術しか使う事ができない。お袋もそうだったし俺もそうだ。ただそれだけだぜ。それだけで非人、人に非ずときたもんだ。皆がそうやって俺達を蔑む中、ダイナスさんだけは違っていた。あの人はあの城の中で唯一人、そんな差別をなくそうと尽力してくれてたんだ。」
「ダイナス殿はずっと城にいたのですか?」
「いいや。あれは俺が警備の仕事に就いたばかりの時だったから、十年位前かな。ひょっこり城へやって来たんだ。何しろ頭はいいし、魔力も高いと言う逸材だったものだから、すぐさま陛下のお気に入りとなり相談役として陛下の傍に仕えるようになった。
 あの人は少々変わり種で、身分制度の廃止論者だった。当時からそんな事唱えるような奴はいなかったからな。当然、自分の身分の上に胡坐をかいていた重役連中には煙たがれ、相当嫌がらせも受けたようだった。ダイナスさんは、最終的には光子制度を廃止したかったようだ。」
「光子制度の廃止・・・」
「だが、ダイナスさんが改革を推し進めている最中、陛下の暗殺未遂事件が起こったんだ。これがまた謎に包まれた事件でな。確かに襲撃はあったようだし、犯人も逮捕されている。犯人は魔術が使えない者が集まっている村、ワースレス村の者だとの事だったんだが、こいつが裁判にかけられた様子もなければ処刑されたという話も聞かない。ただ噂だけが大きく広がって、皆がワースレス村の連中を憎むようになっていった。
 そんな事件があったせいで、それまで連中を擁護する姿勢を貫いていたダイナスさんは重役達から厳しく糾弾され、終いには事件の黒幕に祭り上げられ城を追い出されてしまったんだ。そうなったらもう、陛下としても庇いきれなかったようだ。
 だが俺は今でもあの事件は、ダイナスさんを陥れる為に重役達が仕組んだ芝居だったんじゃねえかと思っている。ダイナスさんは立派な人だ。俺はあの人を尊敬しているよ。あんただってそうだろう。」
 しきりにひとり頷いているパーソン。
 クラトスは難しい顔をして考えこんでいたが、やがて顔を上げるとパーソンをまっすぐに見詰めて言った。
「パーソンさん、色々と話を聞かせて頂き有難うございました。お陰でダイナス殿の事が少し分かった気がします。今日は泊めて頂くつもりでしたが、急ぎ行きたい所がありますので、これで失礼したいと思います。」
 クラトスは深々と礼をすると、出て行こうと立ち上がった。
「待ちな。あんた一体何をするつもりだい?」
 パーソンも立ち上がりクラトスの顔を覗き込んだ。
「何かおかしいとは思っていたんだ。あんた、最初からダイナスさんの事を聞き出すのが目的だったんじゃないのかい。その事にははなから気付いてはいたが、あんたは悪人には見えなかった。だからここへ連れてきたし、話もしたんだ。」
「・・・成る程。貴方は頭が切れる方のようだ。」
「で?今度は何をする気なんだい。」
「貴方は知らない方がいい。話してしまったら貴方に迷惑をかけてしまう事になる。それに、これから私がしようとしている事は、ダイナス殿に心酔している貴方の気持ちに反する事だ。私は貴方をこれ以上騙すような事はしたくはない。」
「当ててやろうか?城の書庫に忍び込んで何か調べるつもりなんだろう。今は城中も混乱している。それでも捕まる危険性は高いだろう。だが、俺が手引きしてやりゃ簡単に入り込めるぜ。」
「パーソンさん、私は・・・」
「あんたは正直な人だ。それにそのあんたの目、強い意志をもったその瞳がダイナスさんに似ているように思えた。だからこそ俺はあんたを一目で気に入ったんだ。あんたは何かでダイナスさんを疑っているようだが、その一方で信じたいとも思っている。違うかい?だからあの人の事を詳しく調べようとしているんだろう?
 何があったかなんて俺に話す必要はないし、俺としてもしつこく聞くつもりはないさ。だが、このままあんたを行かせて、あの胸糞悪い城の兵士に捕まったりしてみろ。こちとら寝覚めが悪くてしょうがねえや。あんたが俺の立場なんて気にするこたあねえんだ。俺は自分がそうしたいからあんたに協力する。それだけなんだから。」
「・・・パーソンさん。」
「ほれ、話は決まったんだ。さっさと行こうぜ。今の時間だと、警備に立っているのはワイルダーの野郎だな。丁度良いや。あいつなら頼りになる。これならうまく潜り込めそうだぜ。」
 パーソンは、未だ迷っているクラトスへニヤリと笑って見せるとウインクしたのだった。





 パーソンの言ったように城もひどく混乱している状態であった。城門の警護に当たっているはずの兵士達も仕事そっちのけで黒いドームに覆われた神殿を眺めながら話し込んでいる。右往左往している人々の間を縫いながら、うまく城の中に入り込んだ三人は、そのまま書庫へと向かった。
 書庫の前には欠伸を噛み殺している警備兵が一人立っていた。
「よお、ワイルダー。ちょっと中へ入らせてもらうぜ。」
 差し入れだと、菓子の入った包みを放ってよこすパーソン。ワイルダーはニヤリとしてそれを受け取った。
「あいつは甘いものに目がないんだ。」
 二人を書庫へ招き入れ、ドアを閉めながらパーソンは笑った。
「で?何を調べたいんだ?」
「歴代の光子の名前を書いた物があったらそれを見たいのですが。」
「それならあっちの方にあったな。」
パーソンは、隅の本棚に近付くと一冊の本を取り出した。
「あった。これだ、これ。一応初代から書かれているようだが、最初の方は眉唾物だぜ。」
「最近のが見たいのです。」
 本を受け取りめくりはじめるクラトス。その手があるページで止まった。
 覗き込むオリジンとパーソン。そこにはアンナの先代、百年前の光子の名前が綴られていた。
「え!?嘘だろう。なんだよこれ。生贄となった光子が生きている訳ないし、同名って事なのか?」
驚きの声を上げるパーソン。

 そこに綴られていた名前。それは「ダイナス」だったのである。


−調査 終−