8.語られた真実
「あんた…サラさんなんだろ?サラさんが神様?人間やこの大地を創ったっていう?」
目の前に立つ女性を見て、呆然と呟くロイド。
「ええ〜!?だって、サラさんってクラトスの母さんで、そんでもって俺にとっては婆さんで…じゃあ、クラトスは神様の子って事なのか?…という事は、その息子の俺って四分の一ぐらいは神様って事?」
サラ――ソアラはロイドの言葉にクスリと笑った。
「半分はその通りかもしれませんね。この世界の人間や大地は私達が創ったものではありません。私達の方こそが人間によって生み出されたものなのですから。」
「人間が貴方達を生みだしたって…それじゃあ、『六神の戦い』はなかったという事なのですか?」
目を丸くするアブソーブ。
「いいえ。『六神の戦い』があったのは事実です。」
ソアラは目を伏せて話を続けた。
「その頃、この地に生まれた人間達は、すでに独自の文化を築き上げ繁栄の最中にいました。不思議なもので、人は豊かな生活を送れるようになると更にその上を望むようになる。どんどんと強欲になっていったのです。そんな所には必ずと言っていい程心の闇が生まれてくるものです。その闇はだんだんと大きくなっていき、それらが集まり生まれてきたものがあなた方が闇の神と呼んでいるものなのです。」
「…私達人間が闇の神を生みだしてしまった…と言う事ですか。」
アンナが悲しげに呟いた。
「人の持つ妬みや憎しみ、全てを破壊したいと思う心が生みだした産物です。勘違いしないで下さいね。本来闇の力というものはそんなおぞましいものではないのです。光があれば闇が生じますし、闇があるから光も生まれるのです。全ての物がそうして作られているのですから。生きて行く上で闇は必要不可欠なものなのです。今この世界に存在する闇の力は、人の中に生まれた悪意によって本来の姿から変貌を遂げてしまったものと言えばお分かりになるでしょうか。」
すると、今まで黙っていたストレイが口を開いた。
「でも、その闇の神はエビルによって倒されてしまった訳でしょう?それじゃあ今この世界に闇の神はいないって事になりますよね。」
「エビルは闇の神を倒した訳ではありません。闇の神を自分の中に取り込んでしまったのです。エビルを倒せばその封印は解かれ復活する事になるでしょう。ですがエビルに殆どの力を吸い上げられてしまってますから、その力は以前ほど強いものではなくなっているでしょうが。その闇の神が再び変貌してしまうかどうかは、あなた方人間次第です。もちろん闇の神自身も含め、私達神も二度とそうならないように尽力するつもりでいます。」
ソアラは真剣な顔で頷く四人を見渡すと、彼らの緊張をほぐすように微笑んだ。
「話を戻しましょうか。『六神の戦い』の事でしたね。火、水、地、風の四神は、もうすでに誕生してはおりましたが、大きくなりすぎた闇の力を抑える事はできなかったのです。強大な闇の力によってだんだんと世界は荒廃していきました。人々は光を求め祈り続け、その強い思いが生みだしたのが、私、光の神だったのです。それからはあなた方の間で語られている通りです。長く激しい戦いの末、私達は闇の神を次元の門へ封印する事が出来ました。それから私達は、人間達が自立して行く為の一歩としてそれぞれの力を分け与えたのです。その時私は…」
ソアラは言葉を切り、俯いた。
「私は自らの神としての力を封印し、人として生きて行く事を望みました。四神達は反対しました。彼等は私よりも先に生まれただけあって、人間の愚かさも十分承知していたのです。それでも私は人間を信じたかった。それで私は彼らの反対を押し切って神の力を捨てて人間の世界へと降り立ったのです。
人間サラとなった私は、各地を転々として生活していました。力を封印したとはいえ、もともと神である私には年をとるという事がなかったのです。移動を繰り返していたのは世界の様子を見る為だったのですが、その事を隠す為でもあったのです。
そんな生活を始めて五百年ほど過ぎた時の事です。その頃、人間の生活はすっかり落ち着きを取り戻していました。そんな中、闇の神を崇拝し、その復活を願う者達が現れたのです。そして彼等は事もあろうに、封印の力を弱め始めたのです。個々が弱い力でもそれが集まれば大きな力になる。しかもその思想は受け継がれながら何年も続けられました。当然の如く封印の力は徐々に弱められていき、やがて綻びを見せ始めました。中にいる闇の神がそれを見逃すはずがありません。闇の神は、自分を崇拝し目覚めさせた人間達を使って、世界を混乱へと導いていったのです。」
「そんな!!闇の神の封印が破られたのは私達人間の所為だったと言うの!?」
「信じる信じないは、あなた達の自由です。ですが、誓って私は嘘は言っていません。」
「でも!!」
「アンナ、人間というものは勝手な生き物じゃ。それはお前さんもよく分かっているじゃろう?」
アブソーブがいきり立つアンナを諭すように言えば、
「俺もソアラさんの言う事は嘘じゃないと思う。」
と、ロイドもアブソーブに同意を示した。
「クラトスが言っていたんだ。人間は愚かな生き物だって…俺自身、自分の世界でそんな人達をたくさん見てきた。人間全てがいい人達ばかりじゃないんだ。だから中にはそんな事をしてしまう人だっているかもしれない。それでも俺は信じたいと思っているけどな。」
二人の言葉にアンナは唇をかみ黙り込んだ。
ソアラは話を続ける。
「私もロイドさんと同じようにそれでも人間を信じようとしました。しかし、その後、王家の取った行動に愕然としてしまったのです。」
「光の力に目覚めた者を光子と名付けて、生贄として差し出すようになった…」
ストレイの呟きに、ソアラは頷いた。
「そうです。それを聞いた時、私は初めて四神達が言っていた事の重みを感じたのです。自分が愚かだったと悔やみました。それで、再び神の力の封印を解き、神竜のアレグナと共に闇の神へ戦いを挑んだのです。しかし、半分近くの力を大地に開放してしまった私に勝ち目などありませんでした。」
「何で大地に開放した力をもう一度集めようとしなかったんじゃ?」
「闇の力が強まるに連れ、大地も荒れ始めていました。力を奪ってしまえばそれはこの世界の終りに繋がります。全ての力を得たとしても戦いが長引く事は分かっていました。再び闇の神を封印出来たとしても戦いの間に世界が滅びてしまったら意味がありません。…戦いに敗れ傷ついた私は、ある人物に助けられました。その人は時空間に巻き込まれ、ロイドさんの世界からこちらへ飛ばされてきてしまったハーフエルフでした。グリンダムと言う人です。」
「俺達の世界!?ハーフエルフ?」
「ええ。グリンダムは、傷つき倒れていた私を見つけ彼の住む山小屋へと運んでくれました。私が闇の神から受けた傷は酷いもので、その後何百年の間動く事が出来ませんでした。その間、グリンダムはつきっきりで看病してくれ、やがて私達は愛し合うようになっていったのです。そして傷が癒えた数年後、私達はローネリー村に移り住み、そこで夫婦として生活を始めたのです。そんな生活を続けるうちに私達に子供が出来ました。その子は男の子で、名前はエビル。」
「エビル!!?」
揃って驚きの声を上げる四人。サラは、目を伏せながらもはっきりとした声で言った。
「そうです。皆を苦しめている悪魔エビルは、私の息子です。」
「!!!!!」
「エビルが生まれて間もなく、夫グリンダムが姿を消しました。村の者も総出で探してくれたのですが、ついぞ見つける事は出来なかったのです。皆さんも知っているようにローネリーは次元の門に最も近い地で村の外に出る事は非常に危険な事でした。ですから夫も村の外でモンスターにやられてしまったか、どこかで事故で命を落としたのだろうという事になったのです。
私に悲しみにくれている暇はありませんでした。夫が残してくれたこの子を立派に育て上げなければとの思いでいっぱいだったのです。ですがそれさえも私には許されなかったようでした。その一年後、私は家のそばに突然現れた時空の歪みに巻き込まれ、一人別世界へと飛ばされてしまったのです。後に乳飲み子のエビルを唯一人残したまま…」
「別世界って、まさか…」
ロイドの問い掛けにサラは静か答えた。
「そうです。ロイドさん達の世界へと飛ばされてしまったのです。」
あまりの事に四人は、一言も発する事ができずに呆然と立ち尽くすのだった。
「ロイドさん達の世界へ飛ばされた私は、その時のショックで記憶を失ってしまったのです。しかし、記憶失いながらも戻らなければならないという思いだけは強く残っており、私は、どこへ何の為に戻るのかも分からないまま、霧に包まれた何かを求めてひたすら世界を彷徨っていました。
こうして時だけが流れて行き、彷徨い続けていた私は、ある日シルヴァラントの医師に拾われました。その医師に、“記憶を取り戻すには焦りは禁物だ。気分転換にここで働いてみてはどうか”と勧められた事もあって、私はそこで働き始める事にしたのです。
シルヴァラントに腰を落ち着け働き始めた私は、そこである人と出会いました。その人は城の騎士団に所属しており、医師の甥御さんに当たる方でした。名前はブレイヴ・アウリオン…」
ロイドがハッとしたようにソアラを見た。
「アウリオンってまさか…」
「ええ…クラトスの父親となる人です。」
「!!!」
「ブレイヴは、私を好いてくれました。しかし、私はその気持ちに気付きながらも受け入れられずにいたのです。未だ記憶が戻っていない私は、過去の自分に不安を覚えていたのです。
そんなある日、私は仕事で遠出する事になり、その旅の途中で私はマナの大樹を見付けたのです。その時すでにこの世界のマナは減少の一途をたどっていました。人々のマナの大量消費によって大樹は枯れ始めていました。しかし、その聖なる木は、傷ついているにもかかわらず、この私に奇跡を起こしてくれたのです。その神々しいまでの大樹の姿を見た私の脳裏に、失っていた記憶が次々に蘇って来たのでした。
全てを思い出した私は愕然としました。私はブレイヴを愛してしまっていたのです。しかし、彼の胸に飛び込みこの世界に残る事は、神としても、そしてエビルの母親としても許されない事だと分かっていました。私は悩み苦しんだ末、全てをブレイヴに話す決心をしました。彼を諦める為に…。
ところが、全てを知った後でも彼は私への思いは変わらないと告げてきたのです。一緒に私の世界へ渡り、エビルを引き取り自分の子として育てていこうとまで言ってくれました。そんな彼の優しさに、私の心は大きく揺らぎました。その時、私は彼への思いを断つべきだった…でも、出来なかったのです。私は、結局彼の胸へと飛び込んでしまいました。その時の私はもう神ではなく一人の女になってしまっていたのかもしれません。」
ソアラは辛そうに目を伏せた。
「私はブレイヴと結ばれました。彼は、兵士という職業柄様々な土地を訪れており、各地の伝承にも詳しい人でした。その知識を元に私達はワープポイントを探し回ったのですが、なかなか見つける事が出来なかったのです。やがてクラトスも生まれ、私達は日々の生活に追われるようになり、いつしかポイント探索から遠ざかってしまっていました。
そんなある日、風の神が私を助ける為にこの世界へやってきてくれたのです。風の神は現在のエビルの事を私に聞かせてくれました。彼女の話によると、エビルは親切な夫婦の養子となり、魔術を使えない者として差別は受けているものの養父母の愛情に包まれ幸せな生活を送っているとの事でした。
それを聞いて私はホッとしました。そして、あまりにも長い年月がたってしまっていた事に気が付いたのです。今になってエビルの元に実の母親と名乗り出る事が彼の為になるのだろうか。折角、養父母の愛情に包まれ真っ直ぐに育っている彼を迷わせ、傷つける事になるのではないかと思うようになりました。さんざん悩み考えた結果、私は一人の人間としてこの地で家族と共に暮らして行きたいと彼女に告げたのです。
ですが、運命は私にそんな生活を許してはくれませんでした。風の神が訪ねて来た一年後、今度は光の守護竜であるアレグナが私を訪ねてきたのです。彼女は、エビルが光子として目覚めた事。彼が闇の神を自らに封印して新たな支配者として君臨してしまった事。そして、四神が封じ込められてしまった事を話してくれました。
その頃、シルヴァラントは隣国との戦争の最中で、兵士であるブレイヴは出兵していました。折もあろうに、その数日後に彼の戦死の知らせが届いたのです。
私は光の神として戻らなければならない、なにより母としてエビルを止めなければと思いました。しかし、父親が戦死してしまった今、私がこの地を去ればクラトスは一人ぼっちになってしまいます。かといって、危険な地にクラトスを連れて行く事も出来ませんでした。残されるクラトスを不憫と思いながらも、それでも私は戻らねばならなかったのです。私はクラトスを義妹のアマンダに託し、アレグナと共に彼女が使って来たワープポイントを通って元の世界へと戻ったのです。
再びこの地へ降り立った私は、まず世界の荒廃ぶりに驚きました。エビルの闇の力は人間達ばかりでなく、この大地そのものさえも破滅へと導いていたのです。四神の力、そして光の力までもが弱まってしまっている。このままでは世界が滅びてしまう…そう思った私は、考えを巡らせました。そして、ロイドさん達の世界にあったマナの大樹を思い出したのです。全ての命の源であるマナ。そのマナを大地へ送り続けているあの大樹と同じものをこの大地に誕生させる事はできないだろうかと。
これはある意味賭けでした。私は、自分に残されている全ての力を使ってこの木を創り上げたのです。この試みは成功し、この木はしっかりと根付いてくれて大地に命を供給し始めました。しかし、いずれエビルがこの木に気付き破壊しようとしてくるかもしれません。封印を施すにも、もう私にはそんな力は残っていませんでした。」
そんな時、私達の目の前に信じられない人物が現れたのです。それは、死んだと思っていたグリンダムでした。愕然とする私に、彼は当時の事を語ってくれました。彼は、私と同じように突然現れた時空間の歪みに巻き込まれ、再び元の世界へ戻ってしまったのだという事でした。そして数年後にどうにか戻ってこれた時には、もうローネリー村はなくなっており、私も姿を消していたのだと…。」
「確か封印を施したのは旅の魔術師だったと古文書には記されていたの思うが…それがグリンダムじゃったのか。」
アブソーブの言葉にソアラは頷いた。
「エルフの血を引くグリンダムには大地が荒廃して行く様子が目に見えて分かっていたので、なんとかエビルを止めようと説得を繰り返したそうです。しかし、復讐にとらわれたエビルはそれを聞き入れようとはしなかった。どうしたものかと思案していると、ここから強大なマナを感じてやってきたのだという事でした。
私は、グリンダムに全てを話して詫びるしかありませんでした。許してはもらえないと分かっていましたが、それでも黙っている訳にはいかなかったのです。彼は私を責める事はしませんでした。そればかりか、この大樹を守るために彼の全魔力を使って封印を施してくれたのです。
当然エビルは怒りの矛先を彼へと向けてくるでしょう。私は、彼を死なせたくはなかった。ですから、後は自分がどんな事をしてもエビルを止めるからアレグナと共にこの世界から離れて欲しいと懇願したのです。最初は渋っていた彼も最後には頷いてくれました。
ワープポイントもエビルの力の影響でだんだんと不安定になってきていました。恐らく、これが別世界に渡れる最後のチャンスとなるでしょう。私は、アレグナに私の神の力を封じ込めた石をクラトスに渡して欲しいと託しました。神として行使できる力が残されていない以上、私が持っているよりクラトスに護身として持っていてもらう方がいいと思ったからです。これは、この石をエビルから守る為でもありました。
こうして二人はワープポイントへと旅立って行き、無事に向こうの世界へと逃げられたものとばかり思っていたのです。グリンダムがここに残った事を知ったのは、彼がエビルに殺された後の事でした。」
「殺された!!?エビルは実の父親を殺したのかよ!」
ロイドが怒りも露に叫んだ。
「…ええ。私は、彼との約束通り、それからエビルの元へ説得しに向かいました。案の定、エビルは私の言う事など聞こうともしなかったのです。そればかりか、私を殺そうとしました。その時、グリンダムが現れ私を庇い逃がしてくれたのです。光の神である私は死んではいけないと言って…。彼は私を逃がした後、エビルに殺されてしまいました。この事は、再度エビルにあった時にエビル自身の口から聞いた事なので間違いないでしょう。
その事があってから、エビルは次元の門へ結界を施し、簡単には出入りできなくしてしまいました。私は、ここを光の聖地とし、自分の力が少しでも回復してから再度エビルの元へ乗り込もうとここで時を待っておりました。そのまま、十何年かの歳月が流れました。大分力が戻ってきた私は、そろそろ行動を起こそうと機会を見定めていたのです。そんな所へ、もう戻っては来れないだろうと思っていたアレグナが姿を現したのでした。
彼女は、使えるワープポイントを探すのに手間取ってしまい戻るのが遅くなってしまったと言っていました。しかし、私は彼女の言葉の中に嘘を感じ取り、本当の事を言って欲しいと頼みました。
…彼女がポイントを探すのに手間取っていたのは本当でした。でも、彼女は大切な事を私に隠していたのです。それは彼女が向こうである男性と一緒になり、子供を儲けた事。そして、今、もう一人の子をお腹に宿しているという事を。
彼女は家庭を持ちながらも自分の使命を捨てきれず、悩んだ末、ご主人に全てを話したそうです。ご主人はとても優しい方だったのですね。彼女の立場を理解してくれて、娘と二人でいつまでも帰りを待っているからと言って彼女を送り出してくれたのだそうです。私はそうまでして戻ってきて欲しいとは思わなかった。私自身辛い別れをしてこの地に帰ってきたのです。アレグナにはそんな思いをして欲しくはなかったのに…。
でも彼女は笑顔でこう言ったのです。“ソアラ様を守るために私は存在しているのです”と。
それからアレグナはもう一人の子を産むと、その子を信頼のおける夫婦に預け、私の代わりにエビルの元へ行ったのです。」
「死んじゃったのかよ。その、アレグナさん…」
「エビルに敗れた事は確かです。しかし、死んでしまった訳ではありません。守護竜に死というものはないからです。私の力が回復すればいつでも復活する事ができます。」
そう言いながら、ソアラはロイドとアンナをちらりと見た。二人は不思議そうに顔を見合わせた。
「アレグナはあなた方と深い関係があります。アレグナが向こうの世界で結ばれた男性の名は、ハレン・アービング。娘の名前はアンナ。」
「へ?」
ロイドは目を丸くした。
「そして、アレグナがこの世界で産んだ娘が、アンナ、あなたなのですよ。」
「え!?」
「アレグナは向こうに残してきた娘の事をいつも気にしていました。そんな思いから、この世界で生まれたあなたにも同じ“アンナ”という名前を付けてしまったと言っていました。」
「そ、それって…クラトスの奥さんの“アンナ”さんと私が姉妹って事?」
「アンナさんが俺の叔母さんって事なのか?」
ソアラは頷いた。
「向こうの世界の“アンナ”さんと、アンナは光の守護竜の子。クラトスとエビルは光の神の子。そしてロイドさんはクラトスと“アンナ”さんの息子。五人は全く関係がないように見えてもこんな不思議な絆で結ばれていたのです。ですからお互いが絡み、引き付けあったのも偶然とは言えないのです。
エビルが今狙っているのはアンナ、あなたではありません。彼は自分と同じ血を引くクラトスを我が物にせんとしているのです。恐らくクラトス自身その事に気付いているでしょう。ですからあなた方を巻き込まないように傍を離れたのです。」
「私…水の神殿でアレグナさんを見ました。あの時は誰なのか分からなかったけど、あの人が私の母だったんですね。」
アンナは真っ直ぐにソアラを見詰めた。
「あの時、母はお腹の子に自分の意志を託したいと言っていました。ですから、私はそんな母の思いを叶えたいと思います。母がソアラ様を守るために存在していたというのなら、私はきっとクラトスを守るために彼と出会ったんです。だから私は彼を守ります。それが母の願いでもあったでしょうし、なにより私がそうしたいと思うから。」
「俺もそうだ。今まではクラトスを助けたくて俺自身の意志でここに来たんだと思ってた。確かにそれもあったんだろうと思うけど、でも、もしかしたら、母さんや、アレグナさんや、そしてソアラさんがクラトスを助けたいって願う強い思いが俺をここへ呼び寄せたのかもしれない。だから、俺はそんな皆の思いを遂げる為に剣をとる。クラトスをエビルなんかに渡してたまるか!」
それから二人は声を揃えてこう叫んだのだった。
「「ソアラ様、私達に力を。聖剣を目覚めさせて下さい!!」」
ソアラは二人の輝く瞳を見て嬉しそうに微笑んだ。そして、二人が掲げる聖剣へ五つ目の力、光の力を授けたのだった。
聖剣は、七色の光を放ち始め、それを持つ二人の心に共鳴するかのように、その光はどんどんと強くなっていった。
こうして遂に聖剣は目覚めた。そして、決戦の時は刻一刻と近付いていたのだった。
−語られた真実 終−