エピローグ
紆余曲折の末ようやく二人が結ばれてから数日後、ソアラとアレグナがいよいよグランディアへと帰る事となった。
場所はこの世界へ来た時と同じ救いの塔の近くのワープポイント。見送りには、クラトスとアンナ、ユアン、ロイド、ゼロスにしいなも来ていた。
「アンナ、幸せになるんですよ。向こうが落ち着いたら必ずまた様子を見に来ますから。」
「有難うお母さん。きっと幸せになるわ。お母さんも元気でね。」
アンナは、以前よりかなり実体化してきており今は人の姿になっている、母アレグナに抱きつきキスをした。
「クラトス様、どうか娘を宜しくお願い致します。」
「はい。二人で力を合わせ必ず幸せな家庭を築いていきます。貴方もどうかお元気で。」
「大丈夫だよ。俺がちゃんと見張っててやるからさ。俺以外にもこんなにたくさんのお目付役がいるんだからさ。」
共に見送りに来ているゼロス達を指し示し、ロイドが太鼓判をおしてみせる。アレグナはクスリと笑った。
「クラトス様も良いお仲間達に出会えて本当によかったですわ。」
「・・・いいのか、悪いのか・・・」
クラトスは困惑気に呟いた。
ソアラはそんな様子に笑いながら、クラトスに歩み寄ると彼の胸にそっと手を当てた。
「母上?」
しばらくして離したその掌には小さな光の玉が浮かんでいた。
「あなたのマナを少しだけもらっていきますね。この中にはブレイズが生きています。これさえあれば向こうに戻ってからブレイズを復活させる事ができます。」
クラトスは驚いてソアラを見詰めた。
「ブレイズが復活出来る・・・本当ですか母上。あのブレイズのままで復活出来るのですか?」
「ええ、だってこれは彼自身ですもの。このマナを元にすれば十分に可能です。ですから、もう彼の事を気に病む事はないのですよ。」
「よかったじゃんよ、天使様。あんな奴に貸しを作られたままじゃなくってさ。」
ゼロスがクラトスの肩を叩きながら言った。口ではそう言っているものの、彼自身とても嬉しそうであった。
ソアラはクラトスを抱きしめた。
「どうか幸せに・・・今まで苦労した分、きっと幸せになるんですよ。」
「はい・・・母上もどうかお元気で・・・」
ソアラはクラトスに微笑んで見せると、
「名残は尽きませんが、そろそろ行きましょうか。」
と、アレグナに声をかけ、皆から少し離れた所に立った。
二人の周りに移動の魔法陣が広がっていく。
「母上、今まで色々と有難うございました。ブレイズの事、よろしくお願い致します。」
「あなたは私の自慢の息子です。あなたに会えて良かった。皆様、どうか息子をお願い致します。」
「さよなら、祖母ちゃん。またいつでも遊びに来てくれよな。」
皆に見送られ、ソアラとアレグナは光の中へ消えて行った。
「行っちゃったね・・・」
二人が消えた場所を見詰めながらアンナがそっと呟いた。
「やはり、母御と離れるのは寂しかったか?」
心配そうに自分を見るクラトスに、アンナは笑顔を見せた。
「ううん。だって、いつだって会えるでしょ。私は大丈夫よ。」
「それじゃあ、帰ろっか!」
ロイドの一声で、皆は賑やかに帰途へとついた。その最後尾を歩きながら、アンナはクラトスの腕に自分の腕を絡ませ体をもたせかけた。
こんな風にすると、いつも貴方は困ったような、照れたような笑いを浮かべるのよね。
アンナはクスリと笑った。そのままの恰好で黙ったまま歩き続ける。
しばらくして、ふと見上げると再び心配そうに自分を見ている視線とぶつかった。
ほら、また私の事心配そうに見ている・・・私なら大丈夫よ。貴方がいる、そしてこんなにも頼もしい仲間達もいる。私はもう独りぼっちじゃないんだもの。
“あなたとクラトスが時空を越え出会ったのは決して偶然なんかじゃないわ。”
そうね。姉さんの言う通りだと思う。
二つの違った世界に生れ育った二人が時空を越えてめぐり会い、こうして結ばれる・・・考えてみたらすごく不思議な事よね。
でも、きっと私達はこうして出会い、結ばれる為に生れて来たのだと思う。今までの苦しかった事や悲しかった事も全て二人が出会う為に必要な試練だった・・・私はそう思っている。
姉さん、有難う・・・あなたが言ったように、私は、そうした辛く苦しい過去を乗り越えて来る事が出来た自分に、もっと自信を持って生きていくわ。そしてずっとクラトスを支えて行く。あなたがくれた命を大切に、あなたの分まで必ず幸せになる。
アンナはクラトスに微笑みかけた。
「ねえ、クラトス。私は今とっても幸せよ。貴方は?」
クラトスは戸惑った笑いを浮かべ、それでもこう言い切ったのだった。
「ああ、私も幸せだ。」
「それなら・・・」
アンナはニッコリと笑った。
「それなら、いいんじゃない?」
そして、クラトスの手をしっかりと握りしめたのだった。
−時空を越え再び 完−