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プロローグ



 長き苦しい戦いもようやく決着がつき、世界に平和が戻ってきた。
二つに分けられていた世界も一つとなり、生まれ変わった大地に爽やかな風が吹き抜けていく。
 だが、これで終わった訳ではない。全てはこれからなのだ。
 大樹は発芽したばかりで、まだまだ世界のマナは薄い。人々の心の中にも未だ種族間の差別が根強く残っている。
 大地が生まれ変わったように、そこに生きる人々も生まれ変わって行かねばならないのだ。まだ道は遠い。

 ミトスと死闘を繰り返してきた戦士達は今、その遥か先にようやく見え始めた希望の光を、確かな物にするべく、それぞれが動き始めていた。
 本当の平和を取り戻すために・・・・・・。

 そして、ここにも新たな旅立ちをしようとする男がいた。

 「どうしても行くのか?」
 少年はその強い意志を秘めた瞳を男へと向けた。
「・・・クルシスの天使達がいると他のハーフエルフ達の妨げとなろう。この一連の騒動の責任は、クルシスの生き残りである私が負うべきだ。」
「・・・止めても無駄なんだな・・・わかったよ。なら、俺はこの世界のエクスフィアを集め処分するために旅にでる。」
「私は、クルシスに残っているエクスフィアを宇宙へ流そう。」
 男──クラトスは少年を静かな瞳で見つめた。
「結局最後までお前を巻き込んでしまったな・・・・・・」
 少年──ロイドは頭を振る。
「いいんだ。あんたは俺達を陰ながら助けてくれた。」
「お前は、私の自慢の息子だ。」
 クラトスはロイドの頭をなぜ、静かに離れた。
「そろそろ行かねば・・・ロイド、エターナルソードで私をデリス・カーラーンへ送ってくれ。」

 ロイドは迷いを振り切るように一瞬目を閉じ、エターナルソードを掲げた。

「オリジン!! クラトスをデリス・カーラーンへ運んでくれ!!」
『承知した・・・』

 クラトスの体が光に包まれる。
 涙をこらえて見つめるロイドに優しく微笑んだ。

「・・・父さん・・・元気で。」
「ロイド、お前は私より先に死ぬな・・・」

 そして、クラトスを包み込んだ光はそのままデリス・カーラーンへと飛び去って行った。



 ロイドは、クラトスの去った空を見上げたまま動こうとしなかった。
「父さんには父さんの、俺には俺のやるべき事がある・・・わかってるよ・・・わかってるんだ。・・・でも・・・でも・・・それでも俺、本当は父さんと一緒に居たかったよ。別れたくなんかなかった。」
 堪えていた涙が溢れてきて、ロイドは俯いた。

「くぅ〜ん。」

 少し離れた所にいたノイシュが慰める様に鼻面を擦り付けてきた。
「ノイシュ、お前も寂しいか?」
 ロイドはノイシュを抱きしめ、そして再び一人と一匹はそれぞれの想いをこめ、空を見上げた。
 すると・・・

『・・・ロイドよ。感傷に浸っている所を邪魔して悪いが、大変な事が起きた。』

 ロイドはぼんやりとした瞳をオリジンへと向けた。
「・・・大変な事?」
『クラトスがデリス・カーラーンではない、どこか別の場所へ飛ばされた。』
「!!!」
 ロイドの意識は一瞬にして現実へと引き戻された。
「どういう事だよ。別の場所って何処だよ!シルヴァラントか?テセアラか?」
『我らのいるこの世界ではない。どこか別の世界だ。』
「!・・・なんで、どうしてそんな事が?あんたちゃんとやってくれなかったのかよ!!!」
『デリスへと移動する瞬間、何者かの強い力が割り込みクラトスをそちらへと引っ張り込んだ。強引に引きずり込まれたのだ、無事に他の地へ着くことが出来ていたとしても体に相当の負担がかかっているだろう。へたすると次元の狭間に落ちてしまったかもしれぬ。』
「クラトスの体は、まだ完全に回復してないんだぞ!ただでさえ弱っているのにそんな事になったら・・・・大変だ!!早く助けなくちゃ。・・・何処へ飛ばされたか分からないのかよ?」
『今、至急に手の者にクラトスのマナを追わせている。』
「手の者?精霊か?」
『ブッシュベイビーだ。』
「!?・・・・・ブッシュベイビーってあのリスだか何だか分からない得体のしれない生き物の事?あんなの役に立つのかよ。」
『馬鹿にするでない。彼らは太古の昔より我に仕えて、諜報活動を行ってきた優秀な者たちだ。』

「・・・タイコ?・・・チョーホー?・・・」
 訳の分からない単語を並べられ、ロイドは首を捻る。だがすぐに我にかえり叫んだ。
「そんなこたぁどうでもいい!早く探し出せ〜!!!」
『分かっている。しばし待て。彼らに任せておけばすぐに探りだすだろう。・・・・・・・・・・・よいか?そもそもブッシュベイビーとは私がこの地に降り立った時から我が元で忠実に・・・・・・・・テレパシーを使い・・・・・・・』

 ロイドは、なにやら講釈をたれ続けるオリジンを無視し、再び空を見上げる。
「父さん。あんたは、俺が必ず助け出すからな。」
「わぉ〜ん!」

 一人と一匹が決意を胸に空を見上げるその背後では、誰も聞く者のない講釈を続けているオリジンの声が響き渡っていた。



プロローグ 終